能面
著者はながいあいだ能面に興味をもち、能面をたずねて全国の神社や愛好家のあいだをあるきまわった。能面は能の世界では神聖視されているが、著者は能面をありのままにみて、そこに生命の表現をみいだそうとしている。技術が洗練され、形式が完成するにつれて、はじめの生命そのままの勢いが失われていくのは、どの芸術も同じである。能面もまた時代が下がるほどいきいきしたものがなくなっていると著者はいう。古い時代の、発生期の能面のもつ美しさは「言葉で書けば書く手元から消え失せるような」姿をしているが、そこにこそわれわれの祖先がはじめて表現した、日本人の表情が息づいているというのが、この本を貫く著者の見方である。
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