不器男の俳句
一片のパセリ掃かるる暖炉かな 風鈴の空は荒星ばかりかな 凩や倒れざまにも三つ星座 下萌のいたくふまれて御開帳 川淀や夕づきがたき楓の芽 沈む日のたまゆら青し落穂狩 巣鴨や春日に出ては翔ちもどり 浸りゐりて水馴れぬ葛やけさの秋 筆始歌仙ひそめくけしきかな 船室に捩ぢたる鋲や秋灯 夜長屋窓うつりしてきらびやか まのあたり天降りし蝶や桜草 山川の砂焦がしたるどんどかな 枯木宿はたして犬に吠えられし 冬ごもり未だにわれぬ松の瘤 蘖に杣が薪棚荒れにけり 前山の吹きどよみ霞かな 草市や夜雨となりし地の匂ひ 枝つづきて青空に入る枯木かな 月雲をいづれば燃ゆる蚊遣かな にごり江を鎖す水泡や雲の峰 白藤や揺りやみしかば薄みどり 永き日のにはとり柵を越えにけり 麦車馬におくれて動き出づ 向日葵の蘂を見るとき海消えし あなたなる夜雨の葛のあなたかな 卒業の兄と来てゐる堤かな
コメント
コメントを投稿