マカーマート
イスラーム世界を放浪するアブー・ザイドなる人物が己の弁才を以って諸処で騙りをはたらく様を、バスラ出身の教養人ハーリスが目撃し語る形の物語50篇からなる。二人の人物は架空だが、アブー・ザイドについてはエデッサ伯国に近いサルージュ出身地で、侵略により流浪の身となったと語られているため、アル・ハリーリーの同時代の出来事であった十字軍侵略が背景になっていると考えられている。アブー・ザイドの騙りは、辻説教や裁判、文化人の会合等様々な場面で展開され、それに応じて題目は道徳やイスラーム法、詩や文法等多岐にわたりながら、巧みに目的を達成する様子が各篇で活き活きと描写されている。叙述は、全文が基本的にサジュウ体と呼ばれる一種の韻文で書かれ、更に修辞や言葉遊び、文字遊び、難解な単語を駆使し、イスラーム世界の故事、諺を多く織り交ぜた極めて完成度の高いものとされている。このため古来多くの注釈書が書かれてきた。
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