龍太の俳句
雪月花わけても花のえにしこそ 花かげに秋夜目覺める子の遺影 釣鐘のなかの月日も柿の秋 初夢のなかをわが身の遍路行 抱く吾子も梅雨の重みといふべしや 鳥雲に蛻の殻の乳母車 大寒の一戸もかくれなき故郷 女中遠鳶眺めては睡からん 手が見えて父が落葉の山歩く 白菊に遠い空から雨が来る 幸福肌にあり炎天の子供達 たのしさとさびしさ隣る滝の音 朱欒叩けば春潮の音すなり 朧夜のもう誰も出ぬ不浄門 母いまは睡りて花の十姉妹 かるた切るうしろ菊の香しんと澄み 雪降るを見つつ小骨の舌ざはり 緑陰をよろこびの影すぎしのみ どの子にも涼しく風の吹く日かな 雀歩くたのしさ霜のトタン屋根 渓川の身を揺りて夏来るなり かたつむり甲斐も信濃も雨のなか
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