わがひとに与ふる哀歌~晴れた日に~
とき偶に晴れ渡つた日に老いた私の母が強ひられて故郷に帰つて行つたと私の放浪する半身愛される人私はお前に告げやらねばならぬ誰もがその願ふところに住むことが許されるのでない遠いお前の書簡はしばらくお前は千曲川の上流に行きついて四月の終るとき取り巻いた山々やその村里の道にさへ一米の雪がなほ日光の中に残り五月を待つて桜は咲き裏には正しい林檎畑を見た!と言つて寄越した愛されるためにはお前はしかし命ぜられてあるわれわれは共に幼くて居た故郷で四月にははや縁広の帽を被つた又キラキラとする太陽と跣足では歩きにくい土で到底まつ青な果実しかのぞまれぬ変種の林檎樹を植ゑたこと!私は言ひあてることが出来る命ぜられてある人私の放浪する半身いつたい其処でお前の懸命に信じまいとしてゐることの何であるかを
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