イエスの教え~福音書の記述と高等批評~
福音書には、イエスの言葉として「山上の垂訓」など群衆に対して語った説教、弟子など限られた対象に向けて語った言葉、当時の宗教指導者らとの問答といったかたちで、多くの言葉が収められている。福音書の記述を史実と認める立場においては、福音書の中にイエスの教えについて多くの言説を認めることが可能である。一方、いわゆる高等批評においては、福音書は「イエスの言行録」ではなく「宣教文書」であり、イエスが語ったとされる言葉がイエスに帰属するかを疑うというのが基本的立場である。この立場においてイエスに帰属できる発言は数少ない。荒井献はイエスの発言にさかのぼれる言葉は少ないながら、イエスの特徴として、既存の権威に頼ることなく自らの言葉で断定的に語り、当時、一般に交流を深めることが忌避されていた人々に対しても分け隔てなく接し、社会の底辺に視座を据え権力を批判したことを認めている。
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