歴史家として
アブ・アル=フィダは学問にも優れ、特に中世イスラーム世界を代表する歴史家として知られている。代表的な著作として知られている『人類史綱要』は、アダムの時代から1329年までの歴史を記している。前半の序説は簡略で、13世紀前半まではイブヌル・アシールの著作の要約であり、独自の発展が緩やかとなり先人の成果の集成に重きを置かれるようになった14世紀のイスラーム世界の学術の状況を反映している。その一方で13世紀後半以後は彼自身が政治・軍事の中心人物として直接関わった事項が多く含まれており、十字軍末期の状況やマムルーク朝及びシリアの動向を知る上で重要な情報を残している。また、『諸国の秩序』は、中国から大西洋諸島部、フランクからスーダンの世界を28地域に分割して解説している。アブ・アル=フィダは中国やインド、ヨーロッパを訪れた経験がないため、多くは先人の地理書の集成であるが、各地域・都市の位置・読み方、特徴などをまとめた表を導入して分りやすくするなどの工夫が見られる。他にもイスラーム法学や薬学の著書があったと言われているが、散逸して伝わっていない。
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