壊れた花瓶
枯れかけたクマツヅラの花瓶に扇が触れてひびが入った。あまりにかすかに触れたので音ひとつ聞こえなかった。けれどもそのかすかな傷が日ごとにガラスを蝕み目には見えない確かな歩みでゆっくりと花瓶を一周した。きれいな水が一滴ずつこぼれ花がからからになってもまだ誰もそれに気づかない。触れないで割れた花瓶に!同じように愛する人の手もしばしば心に触れて傷つける。ほどなく心はおのずから崩れ愛の花は枯れてしまう。周りからは無傷に見えても低い泣き声を上げながら繊細で深い傷は広がっていく。割れた心に触れないで!
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