孝女白菊の歌
阿蘇の山里秋ふけて、眺めさびしき夕まぐれいずこの寺の鐘ならむ、諸行無常とつげわたるをりしもひとり門を出て、父を待つなる少女あり。年は十四の春あさく、色香ふくめるそのさまは梅かさくらかわからねども、末たのもしく見えにけり父は先つ日遊猟にで、今猶おとずれなしとかや軒に落ちくる木の葉にも、かけひの水のひびきにも、父やかへるとうたがわれ、夜な夜なねむるひまもなしわきて雨ふるさ夜中は、庭の芭蕉の音しげく、鳴くなる虫のこえごえに、いとどあわれを添えにけりかかるさびしき夜半なれば、ひとりおもいにたえざらむ菅の小笠に杖とりて、いでゆるさまぞあはれなる
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